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言わずと知れた”King Crimson Collectors" Club”シリーズの”Official Bootleg”盤でございます。
この時期はサウンドボードを通し”DATによる録音”という公式録音。また、サウンドエンジニアを兼ねるDavid Singleton等が制作を担当しており音質は抜群でございます。
非常に音質は良いものの、あくまで海賊盤対策用”Official Bootleg”という事。作品としてのライヴ盤制作の音質ではないという事がミソでございます。
内容は言わずもがな。
ラインナップは驚愕の”Double Trio”期で名手揃い、
Robert Fripp(G、Soundscape)、Bill Bruford(Ds、Per 当時Bill Bruford"s Earthworks、ex-Yes、Bruford、U.K.、Moraz/Bruford、渡辺香津美他)、
Tony Levin(B、Vo、Chapman Stick、ex-Mike Mainieri"s White Elephant、Steps Ahead、渡辺香津美他)、
Adrian Belew(Vo、G ex-Frank Zappa、David Bowie他)、Trey Gunn(Warr Guitar、ex-Sylvian/Fripp)、Pat Mastelotte(Per、Ds ex- Mr.Mister、Sylvian/Fripp)となります。
1996年10月8日愛知県名古屋市・名古屋市民会館大ホールでの実況録音となります。
かの”Sylvian/Fripp”にて「必ず平等は保証する」とかのDavid SylvianにKing Crimson加入を要請したものの、「King CrimsonはRobert Frippのバンドというイメージがあるから無理」と断られたRobert Fripp。
「愛憎の仲」「犬猿の仲」とも揶揄されたジャズ系名手Bill Brufordを再び迎え、摺った揉んだの末に完成した驚愕の”Double Trio”。
爆弾を抱えながらも意欲的にツアーを進行。
好評を以て迎えられるもののBill Bruford/Robert Frippのみならず”Thrak”等即興以外に日々スポンタニアスな演奏を求めるバンドの体質もあり、選曲・曲順が変化。
”Discipline”King Crimson時代の楽曲を中心に入れ替え状態になっていきます。
実は今公演開場約2時間前の楽屋で大口論というBill BrufordとRobert Frippの深刻な対立が始まり、微妙な雰囲気が流れ始めたKing Crimson。
されど、いつもの事、とライヴの幕が上がる.........................という面倒な経緯がございます................................
さて今作。
活動インターヴァルを約三か月経てという日本公演。
ぎこちなく始まり、何とか演奏・アンサンブルを軌道に乗せ肝心の東京公演での映像収録が既に終了という事があり、やれやれという安堵感が感じられるものでございます。
されどミニマム音楽的で機械的なアンサンブル楽曲にぎこちなさを感じさせる演奏・アンサンブルでございます。
上記に絡む”Thrak”収録楽曲や定番過去曲は手慣れた感じではございますが不自然さを感じる感があり、若干の演奏・アンサンブルのズレや粗さを感じる面もございます。
逆に人間的なグルーヴ感を伴う楽曲では非常な纏まりを見せており、以降の公演で曲順や選曲が変化していく事が伺えるものでもございます。
深刻な対立の発生や演奏・アンサンブルの二極化からでしょうか?二曲程セットリストから削除されている事が非常に興味深いものでございます...................................
この”Double Trio”は様々な可能性を秘めた興味深い編成であったものの、Bruford/Frippの対立があり相当しんどいものであった感がございます。
(Adrian BelewがBruford/Frippの板挟みとなってしまい、気苦労が絶えなかったとか.................................)
各パートの棲み分けや音楽的範囲の有り方、その兼ね合いに苦心していた感もございます。
そもそもツイン・ドラム、ツイン・ギター、ツイン・スティック......(ツイン・ヴォーカルもございますが.......................)という編成でございますが、
ツイン・スティック(ツイン・ベース)でTrey Gunnはかの”Guitar Crafts”出身で正確無比、Tony Levinはかの米国・Jazz/Fusion界の歴史生き証人でありながらも「私はロック・ベーシスト!」と宣う名手。
また後者はJazz/Fusion系ではありながらもセッション作では「普通こんな演奏するか !?」という方でファンク的なリズム感覚も熟知した名手。
名手とは言えこの二名のリズムの違いが「精密な積み木細工」的な”Double Trio”King Crimsonのバンド・アンサンブルに影響を強く与えており、
それぞれの演奏・音楽性の「噛み合いとズレ」から新しい音楽の可能性を探った”Double Trio”King Crimsonではございますが、
それがリズム・アンサンブル面で諸刃の剣として跳ね返ってきた感がございます。
(現行の(某有名ライヴハウス社長曰くの)”雅楽編成”King CrimsonではTony Levin一人。この”Double Trio”King Crimsonの反省に立った感がございます...........)
ツイン・ギター、ツイン・ドラム(Ds/Per的な棲み分けでございますが...........)は可能であるものの、ベースをも兼ねるツイン・スティックはリズム面の兼ね合いが問題となった感がございます...............
(日本のJazz/Fusion界に”Portfolio””Dabblers”というツイン・ベース・バンドがございました。
スラップ/フレットレスの違いがございましたがリズムの摺り合わせが上手く出来ていた事や逆にドラムが一人という編成もあり、こちらは演奏・アンサンブル面は抜群なもの。
但し、いつもの「シーンの興味の欠如」にて活動停止となりましたが...............................)
ツアー後、新作へ向けてセッションを重ねるものの、Bruford/Frippの音楽面含めて対立は解消される事はなく、苦肉の策として”Projekt シリーズ”を企画。
最終的に”Double Trio”新作へ繋げようとするものの、対立は深刻化。
Bruford/Frippは袂を分かつ事となり、企画途中で方針転換。
若手二名を生かす編成へと舵を切る事となります...................................................そして”Nuovo Metal”King Crimson期へ...............................
今作は崩壊に向かう”Double Trio”期の分岐点という感がございます...............................................
ロック音楽としてみると「なぜこうなるのか?」と首を傾げたくなるものが作品・周辺作・活動含め非常に多い”King Crimson”。
そもそも”Robert Fripp”自身が”ポピュラー音楽分野で興味深い活動をする現代音楽家”でございます。
「ミュージシャン相互の秩序と信頼の音楽で特定の形を持たず、その音楽の根底に横たわるエネルギーをRobert Fripp自身が”King Crimsonである”と認識した時に、それが”King Crimson”となる」
とも言われます。
今作は”Official Bootleg”ではございますが、「現代音楽家Robert FrippとKing Crimsonという実験的存在」の貴重な記録の一つの感がございます...........................
(Fripp/King Crimsonの面倒な関係とも申しますか................)
この機会に是非。
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